相続した不動産を売却する場合の取得費

親の購入金額が分からないときに確認したいこと

相続した不動産を売却するとき、よく問題になるのが「取得費」です。

相続人自身が購入した不動産ではないため、親や祖父母がいくらで購入したのか分からないことがあります。購入時の売買契約書や領収書が残っていないケースも少なくありません。

この場合、相続人が相続した時点の価格をそのまま取得費にするわけではありません。

相続した不動産を売却する場合は、原則として、被相続人がその不動産を取得したときの取得費や取得時期を確認する必要があります。

このページでは、相続した不動産を売却する場合に、取得費について何を確認すべきか、親の購入金額が分からない場合にどのような資料を探すべきかを整理します。

このページの結論

相続した不動産を売却する場合、まず確認すべきなのは、被相続人がいつ、どのように、その不動産を取得したのかです。

相続税評価額や相続時の時価が、そのまま譲渡所得の取得費になるわけではありません。

親の購入時の売買契約書がない場合でも、登記簿謄本、固定資産税課税明細書、建物資料、住宅ローン資料、過去の地価資料、相続時の資料などを確認することで、取得費を説明できる可能性があります。

一方で、どの金額を取得費として申告するかは税務判断を伴います。

最終的な判断は税理士に確認する必要があります。

不動産価格や資料の観点から取得費の根拠整理が必要な場合は、不動産鑑定士による取得費意見書が検討対象になります。

1. 相続した不動産では誰の取得費を考えるのか

相続した不動産を売却する場合、相続人が相続した時点の価格ではなく、被相続人が取得したときの取得費が問題になります。

たとえば、父が昭和時代に購入した土地を子が相続し、その後に売却した場合、取得費を考えるうえでは、父がその土地を取得したときの購入金額や取得時期を確認することになります。

相続人から見ると「自分は相続で取得しただけ」ですが、譲渡所得の計算では、被相続人側の取得経緯を確認する必要があります。

そのため、相続不動産の取得費を整理するときは、まず次の3点を確認します。

  1. 誰が取得した不動産か
  2. いつ取得した不動産か
  3. どのように取得した不動産か

ここを整理しないと、取得費を検討する出発点が分かりません。

2. 相続税評価額と譲渡所得の取得費は違う

相続税申告で使った土地評価額と、不動産売却時の譲渡所得の取得費は同じものではありません。

相続税評価額は、相続税の計算のために使われる評価額です。

一方、譲渡所得の取得費は、不動産を取得したときの購入代金や取得に要した費用などを基に考えるものです。

そのため、相続税申告書や土地評価明細書がある場合でも、その金額をそのまま譲渡所得の取得費として使えるわけではありません。

【相続税評価額と取得費の違い】
項目 相続税評価額 譲渡所得の取得費
目的 相続税を計算するため 不動産売却時の譲渡所得を計算するため
基準時点 相続開始時点 被相続人等が取得した時点
主な資料 路線価、評価明細、相続税申告資料 売買契約書、領収書、登記資料、建物資料など
注意点 相続税申告のための評価額 相続税評価額とは別に取得費を確認する必要がある

相続税評価額が分かっていても、取得費の確認は別に行う必要があります。

3. 親の購入金額が分からない場合に確認する資料

親の購入時の契約書がない場合でも、他の資料から取得時期や取得費を説明できる可能性があります。

相続不動産では、購入時の売買契約書や領収書が残っていないことがよくあります。

しかし、契約書がない場合でも、登記情報、固定資産税資料、建物資料、住宅ローン資料、相続時の資料などから確認できることがあります。

【相続不動産で確認したい主な資料】
資料 確認できる可能性がある内容
登記簿謄本 被相続人の取得時期、取得原因、地目、地積、建物の新築時期
固定資産税課税明細書 土地・建物の面積、構造、評価額など
親の売買契約書・領収書 購入金額、支払金額、購入時期
住宅ローン資料 借入金額、借入時期、対象不動産
建築確認資料・建物図面 建物の建築時期、構造、床面積
相続税申告書・評価明細 相続時の不動産内容、土地評価の前提
遺産分割協議書 相続人、相続財産の内容
地価資料・住宅地図・航空写真 取得当時の価格水準や土地利用状況

これらの資料を組み合わせることで、親の購入時の契約書がない場合でも、取得時の状況を整理できる可能性があります。

4. 被相続人の取得時期を確認する方法

相続不動産では、被相続人の取得時期を確認することが重要です。

取得時期が分からなければ、当時の価格水準を確認することも難しくなります。

また、長期譲渡所得・短期譲渡所得の判定にも、取得時期は関係します。

まず確認するのは、土地・建物の登記簿謄本です。

登記簿謄本では、所有権移転の時期や登記原因を確認できる場合があります。

建物については、新築年月日、構造、床面積などを確認できることがあります。

ただし、古い不動産では、登記だけでは当時の実際の取得経緯が分かりにくいこともあります。

その場合は、次の資料も確認します。

  • 権利証・登記識別情報の袋
  • 固定資産税資料
  • 相続税申告書
  • 遺産分割協議書
  • 住宅ローン資料
  • 建築確認資料
  • 古い地図や航空写真

相続が何代も続いている場合は、父母だけでなく、祖父母やさらに前の取得経緯まで確認が必要になることがあります。

5. 先代・先々代からの相続がある場合

相続が何代も続いている不動産では、取得費の確認が複雑になりやすくなります。

たとえば、祖父が購入した土地を父が相続し、その後に子が相続して売却するケースでは、父が取得した時点だけでなく、祖父の取得時期や取得費が問題になることがあります。

このような場合、相続人が把握している情報だけでは足りないことがあります。

【複数世代の相続で確認したいこと】

  • 最初に購入した人は誰か
  • その人がいつ取得したか
  • その後、何回相続が発生したか
  • 相続のたびに登記が行われているか
  • 途中で贈与、交換、換地、分筆、合筆がないか
  • 建物が建築・増築・取壊しされていないか

複数世代の相続では、単に「親から相続した」と整理するだけでは不十分な場合があります。

取得費の検討では、不動産の取得経緯を時系列で整理することが重要です。

6. 建物を親が建てた場合の取得費

相続した不動産に建物がある場合、土地だけでなく建物の取得費も問題になることがあります。

たとえば、親が土地を購入し、その後に自宅を建てた場合、土地の取得費と建物の取得費は別に整理する必要が生じます。

建物については、建築請負契約書や領収書が残っていれば確認しやすいですが、古い建物では資料がないことも多くあります。

【建物について確認したい資料】
資料 確認できる可能性がある内容
建築請負契約書 建築費、工事内容、建築時期
領収書・振込控え 建築費や追加工事費の支払い内容
建築確認通知書 建築時期、用途、構造、規模
検査済証 建物完成時の確認資料
建物登記 新築年月日、構造、床面積
固定資産税資料 家屋の種類、構造、床面積、評価額など
建物図面 間取り、床面積、配置など

建物資料がない場合でも、建物登記や固定資産税資料から建物の概要を確認できることがあります。

7. 相続後に建物を取り壊して売却した場合

相続後に建物を取り壊して土地を売却した場合でも、建物の取得費や取壊しの経緯が問題になることがあります。

売却時には更地になっていても、取得時や相続時には建物が存在していたケースがあります。

この場合、土地だけを見て判断するのではなく、建物の有無や取壊し時期を確認することが重要です。

確認したい資料は、次のようなものです。

  • 建物登記
  • 固定資産税課税明細書
  • 建物の閉鎖登記簿
  • 解体工事の契約書・請求書・領収書
  • 売却時の契約書
  • 相続時の資料
  • 航空写真や住宅地図

建物を取り壊した場合の税務上の取扱いは、状況によって判断が分かれることがあります。

具体的な申告判断は税理士に確認する必要があります。

8. 相続不動産で概算取得費5%が問題になりやすい理由

相続不動産では、被相続人の購入資料が残っていないことが多いため、概算取得費5%が問題になりやすくなります。

親や祖父母が昔に購入した不動産では、売買契約書、領収書、住宅ローン資料、建築資料などが残っていないことがあります。

その結果、取得費を説明できる資料が見つからず、売却金額の5%を取得費とする概算取得費が問題になることがあります。

ただし、相続不動産でも、登記情報、固定資産税資料、建物資料、地価資料、航空写真などを確認することで、取得費を説明できる可能性があります。

すぐに5%と決めるのではなく、まず取得経緯と資料の有無を整理することが重要です。

9. 相続不動産で誤解されやすいポイント

相続不動産の取得費では、「相続税評価額をそのまま使える」「相続した時点の時価で考える」といった誤解が生じやすくなります。

誤解1:相続税評価額がそのまま取得費になる?

相続税評価額と譲渡所得の取得費は別の問題です。

相続税評価額が分かっていても、譲渡所得の取得費は別に確認する必要があります。

誤解2:相続した時点の時価が取得費になる?

相続人が相続した時点の時価を、そのまま取得費として考えるわけではありません。

被相続人の取得費や取得時期を確認する必要があります。

誤解3:親の契約書がなければ必ず5%になる?

必ず5%になるとは限りません。

登記情報、固定資産税資料、建物資料、地価資料などから取得費を説明できる可能性があります。

誤解4:相続してから5年以内に売ると必ず短期譲渡になる?

相続した不動産では、被相続人の取得時期を引き継いで所有期間を考えることがあります。

相続人が相続してからの期間だけで判断するわけではありません。

誤解5:不動産鑑定士が税額を判断する?

税額計算、申告書作成、税務判断は税理士の業務です。

不動産鑑定士は、不動産価格や資料の観点から取得費の根拠整理を行います。

10. 相続不動産の取得費を整理する流れ

相続不動産の取得費は、被相続人の取得経緯を時系列で整理することから始めます。

手順 内容
1 売却した不動産の内容を確認する
2 被相続人がいつ取得したかを確認する
3 被相続人の取得原因を確認する
4 土地・建物の状況を確認する
5 親の契約書・領収書・住宅ローン資料を探す
6 登記簿謄本、固定資産税資料、建物資料を確認する
7 取得当時の地価資料や住宅地図を確認する
8 税理士に申告方法を確認する

この流れで整理すると、取得費を説明できる可能性があるか、どこが不明点なのかを把握しやすくなります。

11. 取得費意見書という選択肢

取得費意見書とは、相続した不動産の取得費が分からない場合に、不動産価格や資料の観点から取得費の根拠を整理する説明資料です。

取得費意見書は、税務申告書ではありません。

また、「この金額で必ず税務署に認められる」と保証する資料でもありません。

税理士が申告内容を検討する際の説明資料として、不動産鑑定士が作成するものです。

相続不動産で親の購入金額が分からない場合は、まず取得経緯と資料の有無を整理することが出発点になります。

13. まとめ

相続した不動産を売却する場合、相続人が相続した時点の価格をそのまま取得費にするわけではありません。

まず確認すべきなのは、被相続人がいつ、どのように、その不動産を取得したのかです。

親の購入時の契約書がない場合でも、登記簿謄本、固定資産税課税明細書、住宅ローン資料、建物資料、相続時の資料、過去の地価資料などを確認することで、取得費を説明できる可能性があります。

また、相続税評価額と譲渡所得の取得費は別の問題です。相続税評価額が分かっていても、取得費の確認は別に行う必要があります。

一方で、どの金額を取得費として申告するかは税務判断を伴います。

最終的な判断は税理士に確認する必要があります。

不動産価格や不動産資料の面から取得費の根拠整理が必要な場合は、不動産鑑定士による取得費意見書が検討対象になります。

取得費意見書・事前調査について

相続した不動産について、親の購入金額が分からない、購入時の契約書がない、概算取得費5%でよいのか不安がある場合は、まず資料から取得費を説明できる可能性があるかを確認することが重要です。

固定資産税課税明細書などをもとに、取得費意見書の対象になりそうか事前調査が可能です。

取得費意見書の無料事前調査・費用・ご依頼の流れは、専用ページでご確認ください。

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